西洋更紗トワル・ド・ジュイ展【エトセトラ】
展覧会最終日にやっと西洋更紗トワル・ド・ジュイ展に行ってきました。「トワル・ド・ジュイ」と言えば、真っ先に浮かぶのはいわゆるコットンに銅板で単色プリントした田園風景のデザインですが「トワル・ド・ジュイ」という言葉は「ジュイ(地名)の布」という意味で1760年にパリから30キロのところにあるジュイ=アン=ジョザスにオーベルカンプという人がプリント布地の工場を設立したところから始まりました。
17世紀にインドから輸入したインド更紗の爆発的な流行により、フランスの伝統的テキスタイル生産者からの抗議でインドからの綿の輸入と、その着用についても禁止令が出されました。禁止令は1686年から73年間もの長い期間に及んだため、フランスではプリント技術が断絶したため、プリント技術を持つドイツ人のオーベルカンプが呼び寄せられることになります。オーベルカンプの資質は、プリント技術と同時にデザインの重要性を認識していたことでしょう。伝統的な技術を使いつつ新たな技術にも挑戦し、様々なデザインを具現化しました。じつはオーベルカンプの工場では木版によるプリントの方が銅板プリントよりも多く生産されていたようです。銅板プリントは1770年にイギリスで開発された銅版ローラーによるプリントを導入し、銅版ならではの細やかな表現による田園風景や動植物のデザインが生まれることになります。木版と銅板の両方を生産していたようです。
1798年頃の木版プリントされたものです。初期はインド更紗の影響からエキゾチックな植物柄が多かったのですが、次第にフランスナイズされたデザインにシフトしています。こちらはフランスで愛されているバラとチューリップを、その当時流行した植物図譜いわゆるボタニカルアートをデザインに採用しています。
1785年、ジャン=バティスト・ユエによるデザインの銅版プリントです。ジャン=バティスト・ユエは動物画を得意とした王立アカデミーの画家です。オーベルカンプが工場の筆頭デザイナーとして実力のある画家に白羽の矢を立てたこともトワル・ド・ジュイが成功した理由でしょう。こちらは、お城の庭というタイトルですが、描かれているのは王妃マリー・アントワネットだそうです。マリー・アントワネットはオーベルカンプのテキスタイルを大変気に入っており、自身のドレスにもオーベルカンプの生地を使用してました。
当時、王妃がコットンのプリント生地のドレスを着用するというのは到底考えられないほどの画期的なことでした。軽くて着心地のよいコットンを気に入ったというのも納得ですね。